解説 |
1970年代に入り空港周辺の騒音問題の解決や空港の拡張や新設の困難性などの状況の中、短距離で離着陸でき騒音の影響を減少し得るSTOL輸送システムの技術を早急に確立することが必要と考えられた。1975(昭50)年、航空技術審議会の建議「我が国に適したSTOL輸送システムの具体的推進方策」に基づいて、国家プロジェクトとして科学技術庁航空宇宙技術研究所(現:JAXA)によってSTOL実験機の研究開発が開始された。
実験機は国内航空機メーカ5社とエンジンメーカー3社の協力を得て完成し、1985(昭60)年10月28日に初飛行した。国産のC-1輸送機を原型機として、国産のFJRエンジン4基を翼の上に搭載した。エンジン排気をフラップに沿って下向けに曲げ、高い揚力を得るUSB(Upper Surface Blowing:翼上面吹き出し)方式の高揚力装置やコンピュータによる飛行安定装置など各種の新技術を採用した。1989(平成元)年3月30日まで飛行試験が行われた。
本機の飛行試験によってコンピュータ飛行制御技術、複合材技術などの各種新技術の効果と実用性が飛行実証された。これらの各種新技術は飛鳥プロジェクトに参加した航空機メーカの技術者を通して後のUS-2などの国産機開発に大きく貢献した。また、飛鳥に搭載された我が国初のファンジェットエンジンFJR710/600Sの技術は、V-2500などの国際共同開発エンジンの端緒となったほか、後の国産エンジンF-3、F-7などの開発に大きく貢献した。
「飛鳥」はかかみがはら航空宇宙博物館の開館以来、同館内に保存され、飛行実験の歴史を伝える装備をよく残していることも貴重である。 |