2025年7月 航空遺産写真 今月の1枚
ローマへの大飛行に出発(1925年)
航空遺産継承基金事務局で所有している写真を毎月1枚ピックアップしてご紹介します。
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今月は、100年前の「朝日新聞訪欧大飛行」の絵葉書を紹介します。
絵葉書の元となった写真は、訪欧大飛行の前に立川飛行場で飛行訓練を行っていた際に撮影されたものです。1925年7月25日、この2機はイタリア・ローマに向けて東京・代々木練兵場(現在の代々木公園)を出発しました。
絵柄の面には
「訪歐飛行機 初風號 東風號
安邊飛行士 河内飛行士 篠原機關士 片桐機關士」
とあります。
この絵葉書をコレクションした人物が書き加えたと思われる「大正十四年七月廿五日午前九時/東京代々木原出発」という言葉には、このイベントを同時代人として目撃した感動が窺えるようです。
葉書の宛名面には、「欧州訪問大飛行記念」「大阪朝日新聞社発行」と書かれています。(下図参照) |
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代々木練兵場では、出発に際し式典が執り行われ、見物人も多く詰めかけていました。『訪欧大飛行誌』(朝日新聞社、1926)は、その様子を以下のように述べています。
航程一万キロの大飛行、独り我が国における、破天荒の雄図たるのみならず、世界航空史上にも誇りある頁を占め、比なき功業を千載に遺すべき、本社の訪欧飛行機『初風』『東風』の両機が、国を挙げての感激と声援に勇み立ちつつ重き任務を輝く翼に載せて、栄あるスタートを切るの日は来た。大正十四年七月二十五日、今日しも飛び立つ四勇士の双肩には、六千万国民の栄辱を左右すべき大なる鍵が懸けられている、満都市民景仰の盛んにして、親朋離情の切なるは云うまでもない。壮なるかな、空には陸軍民間を合して三十台の歓送飛行機、轟々として御風銀翼を連ね、地には二十万の内外民衆嗷々として歓呼波濤を巻く。実に異域征空の首途に相応しい光景である。
――朝日新聞社、1926、『訪欧大飛行誌』(字体、かなづかいを改めた。)
下は、その様子を捉えた航空写真です。
1925年当時の代々木練兵場(現在の代々木公園)と、隣接する明治神宮の参道や原宿駅の様子が分かります。
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航空遺産継承基金では、今後も引き続き所蔵資料の保存・調査・公開に取り組んで参ります。
(2025/07/29修正:絵葉書の元となった写真の撮影地は代々木練兵場ではなく立川飛行場というご指摘をいただき、内容を一部修正しました。ご指摘ありがとうございました。) |
関連文献リスト
岡野養之助編、1926、『訪欧大飛行誌』再版、朝日新聞社、国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1020238/1/228
前間孝則、2004、『朝日新聞訪欧大飛行』上下巻、講談社(航空図書館所蔵) |
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